生まれた直後の“太陽”の素顔 2005年3月1日
濱口健二(NASAゴダード宇宙航空センター)
根建航、小林尚人(東京大学)
Michael F. Corcoran、Rob Petre、Nicholas E. White
(NASAゴダード宇宙航空センター)
Beate Stelzer (INAF, Italy)
ここ10年の赤外線や電波の観測で、零下240度もの極低温ガスの塊が夜空
に発見されてきました。“クラス0原始星”と分類されるこの天体の奥底には、 周囲
のガスを集めて今まさに成長しつつある“赤子の太陽”がいると推測されています。
しかし周囲を取り巻く濃いガスのために、この赤子の星を直接見る術はこれまで
ありませんでした。
短い波長のX線は、このような濃いガスをも通り抜けられます。これはレントゲン
撮影で人の体が透けるのと同じ原理です。今回私たちは、ヨーロッパのXMMニュー
トン衛星の観測で、この赤子の星本体から直接放たれるX線を初めて明確に捕らえました。
図2は500光年かなたにある、南の冠座・R星星形成領域のX線での画像です。
この画像では可視光を模して、短い波長のX線を青、長い波長のX線を赤にしています。
見つかったクラス0原始星・IRS7Bは、最も吸収されにくい濃い青色のみで浮かび
上がってきました。これはこの天体が、極低温のガスの塊の奥深くにいる事、そこで
4000万度もの超高温ガスを作り出している事を意味します。
図2左上図はこの領域をすばる望遠鏡とハワイ大学の2m光赤外線望遠鏡で撮影した
赤外線画像です。このIRS7Bは、これまで赤外線で見えていない謎の天体でした。
今回、吸収に埋もれた天体を検出することに高感度なすばる望遠鏡によって、未だ暗く
冷たい産まれた直後の星がこの場所に確かに存在する事が初めて分かりました。
“クラス0原始星”は、星の中心部で核融合反応が点火するより遥かに前の段階の、
極低温の星です。そんな赤子の星が太陽より数十倍も高温のプラズマを生み出すには
この種の星特有の機構が必要です。この星は周りからガスを寄せ集めて成長する途上に
ある事から、その際に周囲の強力な磁場を撚り、周囲のガスを 加熱して高温のガスを
生成するのだと、私たちは考えています。X線で初めて見えた赤子の星は、どうやって
太陽が産まれ、成長して来たのか私たちに教えてくれているのかもしれません。