新たに見えて来た力が重力による星形成を助けるかもしれない
研究者はガスに覆われた星の生成現場を覗き込み、星間ガスが収縮し、星が誕生
する瞬間の詳細な現象ー例えれば赤子の産声のようなものーを捕らえた。
この観測は、主に、ヨーロッパ宇宙機関のXMMニュートン衛星によって行われた。
その結果によると、これまで知られていなかった、おそらく磁場活動が関連した
高エネルギー活動が、星のコア表面を高温に加熱し、周囲のガスをより近くに引
き寄せるよう刺激している事が分かった。
「我々は星形成の真に最初期の状態を見ているようだ」濱口健二博士は述べた。
彼は、アメリカ、メリーランド州NASAゴダード宇宙航空センターで、NASAの
資金を基に研究しており、今回のアストロフィジカルジャーナル誌の論文の主著者
である。「これまでの観測はこのような段階のガス雲の表面部分のみを捕らえて、
その内部を覗き込む事はできなかった。このような早い段階でのX線放射の検出は、
重力だけが星を作り出す力ではない事を意味しているのかもしれない。」この結果
を補強するデータが、NASAのチャンドラX線望遠鏡、ハワイにある 日本のすばる
望遠鏡、ハワイ大学の88インチ望遠鏡により得られた。濱口らのチームは、地球
から500光年離れた、南の冠座のR星星形成領域のクラス0原始星からのX星を
発見した。
クラス0とは最も若い段階の原始星を指し、一万年から十万年の年齢にあたる成長
段階の星である。周囲のガスの温度は零下240度の極低温にある。数百万年後に
は、星形成コアの中心部で核融合が起き、新たな星が形成される。
このチームは、自転する原始星コアが持つ磁場が、コアに落ちてくるガスを高速
に加速して、高温のガスを作り出し、そこからX線を放射すると考えている。これ
らのX線は周囲のガスを透過できるため、そのコアの状態を我々に伝えてくれる。
「この活動は穏やかな自由落下では到底説明できない」論文共著者のNASAゴダ
ード宇宙航空センターのマイケル・コーコラン博士は語った。X線放射は、ガスを
高速に加速する力が存在し、それが冷たいガスを数百万度まで加熱する事を、教え
てくれる。コアからのX線放射は、冷たいガスがコアに落ち込む際の隠された過程を
探る方法を与えてくれるのだ」
濱口は、クラス0原始星でX線が放射される機構を、太陽上でフレアが起こった際に
起こる現象になぞらえている。太陽の表面には数多くの磁気ループがある。これらは
ねじられ、最終的には巨大なエネルギーを放出する。このエネルギーは電気を帯びた
粒子(主に電子と荷電した原子)を秒速3000キロメートルまで加速する。その
粒子は太陽表面に打ち当りX線を放出する。同じようによれた磁気ループの解放が、
濱口やその共同研究者によって観測された、X線放射の原因なのかも知れない。
非常に若い星、クラス0原始星からの磁場の検出は、星形成過程を理解する上で重要
な手がかりとなる、というのは、磁気ループはガスの収縮を緩和する役割を持っている
と考えられるからだ。荷電した“いわゆるイオン”粒子のみが、磁場にとらわれる。
研究者達はその磁場やイオンがどこやってできるのか、確信は持っていない。しかし、
X線は原子をイオン化し、磁場活動を刺激して更にイオンを加速し、それによってまた
X線を放射する。
この種の観測の場合、非常に微小な光しか星周ガスを通過して来ないため、濱口ら
のチームは、強力な集光能力を備えるXMMニュートン衛星を用い、過去にない空間
分解能(=視力が非常に高い)を持つチャンドラ衛星を用いて、X線源の場所を特定
した。このチームは赤外線のすばる望遠鏡を用いて、原始星の年齢を特定した。
「原始星は何百万年を経て進化して行く。年齢は赤外線域で良く研究されている
スペクトル型その他の特徴を基にして決定する。」すばる観測の中心人物である
東京大学の博士課程の大学院生、根建航はこのように述べている。
このチームには、その他に、NASAゴダード宇宙航空センターのロブ・ペトレ、
ニコラス・ホワイト両博士、イタリアパレルモの天文観測所のビアーテ・ステルツァ
博士、東京大学の小林尚人博士らが含まれる。濱口健二はナショナルリサーチカウン
シル(NRC)から、マイケル・コーコランはユニバーシティーズスペースリサーチアソ
シエーションから研究助成金を受け取っている。